現役時代は芝・ダート両方でGⅠを勝利して
レコードタイムを4度も記録したように、
まさに『強い外国馬のお手本』
とも言える成績を残したクロフネですが、
種牡馬入り以降も大舞台で活躍する産駒を
多く輩出しており、
今もなお第一線で頑張っている『タフさ』は
素晴らしいものがあると思います。
さらに外国から輸入された馬であることから
日本競馬界の主流血統との相性もいいだけに、
ブルードメアサイアーとしての存在感も
年々強くなってきています。
今回はそのクロフネが輩出した
代表的GⅠ馬を紹介すると共に、
その産駒の特徴といったものも含めて
紹介していきたいと思います。
クロフネの産駒!子供を5頭紹介
クロフネの産駒の特徴として
まず挙げられるのが
『牝馬の活躍馬』が多い
といったものです。
今回紹介する5頭の内3頭が牝馬であり
他にもホエールキャプチャやホワイトフーガ
といったGⅠ(JpnⅠ)馬がおり、
さらにそれらの産駒が
『短い距離での活躍が多い』
というのも非常に分かりやすい特徴
だと思います。
今回はその中でも近年非常に記憶に残っている
クロフネ産駒を5頭ピックアップして、
それらの活躍を見ていきたいと思います。
1.スリープレスナイト
母:ホワットケイティーディド
母父:Nureyev
主なGⅠ・重賞勝ち鞍
- スプリンターズS
- 北九州記念
- CBC賞
デビュー3戦目から4歳時の栗東Sまで
11戦連続でダートの短距離を中心に
使われていましたが、
次走のCBC賞で約1年半ぶりの芝レースながら
重賞初制覇を飾るとそこからダートも含めて
5連勝でスプリンターズSまで制して
あっという間に短距離界の頂点に立ったのが
このスリープレスナイトです。
そのスプリンターズSでは先行策から
外を回って進出する王道の競馬で勝利し、
僅か半年で頂点まで上り詰めた
シンデレラストーリーは、
一旦は目の怪我で引退直前まで追い込まれた
鞍上の上村洋行騎手の男泣きと共に
非常に感動的なものでした。
繁殖入り後は2番目の産駒を出産した後に
骨折により死亡し僅か2世代しか
産駒を残せませんでしたが、
残された唯一の牝馬ブロンシェダームが
母のような活躍を見せる産駒を
輩出してくれるのを期待したいところですね。
2.カレンチャン
母:スプリングチケット
母父:トニービン
主なGⅠ・重賞勝ち鞍
- スプリンターズS
- 高松宮記念
- 阪神牝馬S
- 函館スプリントS
- キーンランドC
『短距離活躍馬の宝庫』
と言われている安田隆厩舎ですが、
その活躍の先駆け的存在となったのが
スプリントGⅠ連覇を達成し、
2年間にわたって王者として
短距離界を牽引したカレンチャンです。
重賞4連勝を含む5連勝でGⅠ初制覇を飾った
11年のスプリンターズSも印象深いですが、
翌年の王者としての堂々としたレースで
後の世界王者となったロードカナロアと
互角以上に渡り合った12年スプリンターズSも、
負けはしましたが非常に強い印象を残した
素晴らしいレースだったと思います。
繁殖牝馬としても
これから活躍馬を出す可能性を
十分に残していますが、
同厩舎同士の夢の配合である2番仔の
カレンモエ(父ロードカナロア)は
今後な長く注目していきたい存在ですね。
3.フサイチリシャール
母:フサイチエアデール
母父:サンデーサイレンス
主なGⅠ・重賞勝ち鞍
- 朝日杯フューチュリティS
- 阪神C
- 東京スポーツ杯2歳S
父クロフネの初年度産駒として
2歳GⅠの朝日杯フューチュリティSを勝利し、
その後現在は年末の風物詩となっている
阪神Cの第1回を勝利したように
『初物』に強かったのが今回紹介する
フサイチリシャールと言えるでしょう。
3連勝で臨んだ朝日杯フューチュリティSでは
1番人気こそジャリスコライトに譲ったものの、
これまでの逃げる競馬から2番手追走の展開で
しぶとく脚を伸ばして押し切った内容は
非常に堂々としたもので、
後にアドマイヤムーンやメイショウサムソンと
互角以上に好走した実績からも
非常に高い能力の持ち主であったのは
間違いないでしょう。
種牡馬としては6年間と短い期間でしたが
2016年エルムSを制したリッカルド以外は
目立った産駒に恵まれなかっただけに
今後は功労馬として長生きしてほしいと
思います。
4.アップトゥデイト
母:リニアミューズ
母父:トニービン
主なJ・GⅠ・J重賞勝ち鞍
- 中山グランドジャンプ
- 中山大障害
- 阪神スプリングジャンプ
- 阪神ジャンプステークス
- 小倉サマージャンプ
平地でもJpnⅠ3着の実績がありながら、
そのずば抜けた飛越センスを
早い段階から見いだされ、
昨年から過去最強障害馬と言っていい
オジュウチョウサンと数々の名勝負を演じたのが
このアップトゥデイトです。
5歳時には同年に中山グランドジャンプと
中山大障害を勝利し障害界の頂点に立ち、
その後は怪我の影響やオジュウチョウサンの
台頭もあって勝てない時期が続きましたが、
これ以上ない大逃げでオジュウチョウサンに
最後まで食い下がった2017年の中山大障害は、
今後長く語り継がれる歴史的名勝負と言って
全く問題ないと思います。
明け8歳となった2018年も
阪神スプリングジャンプを大差で勝利して
さらに進化した面を見せているように、
今後もオジュウチョウサンと
多くの名勝負を見せてほしいと思います。
5.アエロリット
母:アステリックス
母父:ネオユニヴァース
主なGⅠ・重賞勝ち鞍
- NHKマイルC
- クイーンS
近年でもハイレベル世代と言われている
2014年生まれの牝馬世代において
早くから重賞で好勝負を見せており、
牡馬相手にNHKマイルCを勝利して
その世代の強さを証明したのが
このアエロリットです。
NHKマイルCでは他馬より1馬身近く抜けた
ロケットスタートを決めて先行し、
好位追走から直線早め先頭の競馬で
完勝したかと思えば、
続くクイーンSでは軽い斤量と
横山典騎手の好騎乗もありましたが、
大逃げからそのまま逃げ切りを見せたように
自在性のある走りは見ていて非常に
楽しいものがあります。
今年も強力メンバーが揃った中山記念や
安田記念で牡馬相手に堂々とした内容で
2着しているように、
今後またGⅠを勝利する可能性も十分ある
強い牝馬であるのは間違いないでしょう。
クロフネ種牡馬としての成績/戦績は?
出典:http://www.netkeiba.com/?rf=logo
現役時代はその圧倒的パフォーマンスで
我々競馬ファンに強烈なインパクトを残した
クロフネですが、
種牡馬入りしてからの種付け料や
その馬主の存在感から引退後も
相変わらず人気が高い馬と言われています。
ここではそれを証明するような
クロフネの種付け料の推移や、
バックボーンとも言える馬主の存在などを
紹介していきたいと思います。
クロフネの種付け料は?
種牡馬生活に入って2~3年目の
2003年と2004年には500万円という
当時を考えればかなりの高額に設定されていた
クロフネの種付け料ですが、
2010~2014年には300万円、
そして2015年以降は200万円と
徐々に下降している傾向にあります。
ただ、2016年までは毎年150頭近い種付け数を
キープしていたことからも、
引き続きクロフネの血が関係者から
多く求められているのは間違いない事実
ではないでしょうか。
2018年で20歳となり
徐々に高齢の域に入ってきていますが、
まだまだサンデーサイレンス系種牡馬に
負けないような活躍を見せる産駒の誕生に
期待したいところですね。
クロフネの馬主は?
クロフネの馬主は近年の競馬ファンであれば
お馴染みの存在である
『金子真人』さんです。
2005年以降は馬主名義が
『金子真人ホールディングス㈱』
となっていますが、
その卓越した選馬眼は
近年ますます冴えわたっている印象で、
日本競馬界における最強馬候補と言っても
過言ではないディープインパクトを筆頭に、
キングカメハメハ、マカヒキ、ワグネリアンで
個人馬主で日本ダービーを4勝しているのは
驚異的としか言いようがないと思います。
上記の4頭以外にも8頭のGⅠ馬に加えて
数多くの重賞勝ち馬を所有しており、
日本競馬界にとって非常に大きな影響を与えた
馬主の一人であるのは間違いないでしょう。
クロフネの現役時代の成績/戦績は?
2001年に日本ダービーが外国産馬でも
出走可能になったことから、
その開放初年度のダービーを勝つことを願って
名付けられたクロフネのキャリアは
全10戦と非常に少ないものとなりましたが、
その中で勝利した6勝は
どれもが強烈なインパクトを残したものでした。
特にその中でもダートの2戦は、
過去のダートGⅠ馬と比べても
明らかに次元が違う一方的な内容のレースで、
この2戦でクロフネが伝説に残る馬になった
ということに異論を唱える人は
ほとんどいないと思います。
ここではその圧倒的なレース映像と共に、
クロフネの脚質の違いといったものについても
解説していきたいと思います。
クロフネの脚質は?
クロフネの脚質は『芝』と『ダート』
で全くと言っていいほど異なり、
2つの脚質を使い分けた珍しいタイプの競走馬
であったと言えるでしょう。
芝レースではNHKマイルCや
日本ダービーで見せたように、
どちらかと言えば後方から『差す』競馬が
多かったですが、
ダートの武蔵野Sとジャパンカップダートでの
向こう正面から早々と動いて直線では
一方的に後続を突き放す『マクリ』競馬は
他馬など全く眼中にないような
圧倒的な内容のものでした。
どちらにも共通するのが
クロフネ自身の一完歩の『跳びの大きさ』
であり、
スピード感はそれほど感じさせませんが
それでも圧勝してしまうところに
クロフネの強さが表れているのでは
ないでしょうか。
レース動画を紹介
とても届かないような位置から
逃げたグラスエイコウオーを差し切った
3歳春のNHKマイルCや、
怪物の片鱗を見せる圧勝だった毎日杯も
捨てがたいですが、
やはりここはクロフネを語る上で
絶対に外せないダートでの2戦を
紹介したいと思います。
1.武蔵野S(2001年)
神戸新聞杯3着の後は天皇賞・秋出走を
目標にしていたクロフネでしたが、
外国馬の出走枠2枠を賞金上位の
メイショウドトウとアグネスデジタルが
占めたことで天皇賞への出走が不可能となり、
翌年にフェブラリーSへの出走予定が
入っていたことから
天皇賞・秋の前日に行われた武蔵野Sで
初のダート戦に挑むことになりました。
レースでは中団追走から3コーナーを過ぎて
一気に仕掛ける強引な競馬を見せながらも、
直線では見る見るうちに後続を引き離し、
最後は翌年のジャパンカップダートを制する
イーグルカフェに9馬身差をつける大楽勝で
見ている全ての競馬ファンに衝撃を与えました。
ここでは相手関係が弱かったことを
指摘する面もありましたが、
その声を自らの走りでシャットアウトし
歴代最強ダート馬の称号を手にしたのが
次に紹介するジャパンカップダートです。
2.ジャパンカップダート(2001年)
この年のジャパンカップダートには
前年度優勝馬であり最優秀ダート馬である
ウイングアローに加えて、
アメリカから数々のGⅠを勝利している
実績馬リドパレスも出走したことで、
レース前からクロフネとの対決が大きく注目を
集めることになりましたが、
結果としてレースはクロフネの強さのみが
際立つだけの舞台となってしまいました。
スタートで出遅れ後手を踏んだクロフネですが、
向こう正面に入って馬群の外に出すと
3コーナー手前辺りから上昇を開始し、
4コーナーで先頭に立つと直線では
前走のリプレイの如く独走態勢となり、
7馬身差の圧勝に加えて2戦続けて
JRAレコードタイムのオマケつきでした。
どちらも武豊騎手がゴール前で流しており、
本気で走ったら一体どれだけのタイムを
叩き出していたのか、
想像するだけでも末恐ろしいまでの強さを
自らの走りで証明したレースと言えそうですね。
まとめ
競走馬として志半ばで引退することに
なってしまったため、
その限りない可能性が詰まった走りを
見ることはできなくなりましたが、
それでも種牡馬として今もなお最前線で
活躍するGⅠ馬を輩出しているのは
クロフネの潜在能力の高さがあるからこそ
為せる業と言っていいのではないでしょうか。
ブルードメアサイアーとしても
これまで多くの重賞馬を輩出し、
自らの血統の中にサンデーサイレンスの血を
全く持っていないことからも、
今後さらにクロフネの血を持った馬
が日本競馬界で活躍し、
後に世界でもその名を響かせていくのは
間違いないと思います。