大種牡馬サンデーサイレンスの
初年度産駒であり、
その中でも『幻の三冠馬』といった表現が
使われるほど高い評価を受けていたのが
今回紹介するフジキセキです。
デビューから4戦しかしていませんが、
その全てがワンサイドゲームの圧勝で、
さらに3歳春に屈腱炎を発症したことで
あっという間に引退→種牡馬入りしてしまい、
本当の能力が隠されたままとなったことが
その強さをより鮮明なものにしているのかも
しれません。
今回はそのフジキセキ産駒の血統や成績
といったものを代表産駒をピックアップ
しながら紹介していきたいと思います。
フジキセキの産駒!子供を5頭紹介
3歳春から種牡馬生活を送ったこともあって、
早くからサンデーサイレンスの後釜として
期待がかけられたフジキセキでしたが、
GⅠでの活躍する産駒を輩出し始めたのは
種牡馬生活後半になってからでした。
この原因としては父サンデーサイレンスと
早い段階から比較されたことに加えて、
本質的には短距離型だったにもかかわらず
クラシックを目指した配合が行われ、
そこで結果を残せなかったことから
繁殖牝馬の質が落ちてしまったこと
が考えられるのではないでしょうか。
ここではその晩年に誕生したフジキセキの
代表産駒を5頭ピックアップして、
それぞれの成績と映像と共に
見ていきましょう。
1.カネヒキリ
母:ライフアウトゼア
母父:デピュティミニスター
主なGⅠ・JpnⅠ勝ち鞍
- ジャパンカップダート
- フェブラリーS
- 東京大賞典
- 川崎記念
- ジャパンダートダービー
同じ馬主(勝負服)・同じ騎手(武豊)、
そして同じような圧勝劇の連続で
『砂のディープインパクト』
とも称されたカネヒキリですが、
その現役生活はまさしく怪我との戦いの
連続でした。
3歳でジャパンカップダートを制し、
翌年のフェブラリーSを勝利して
国内最強の座を証明したものの、
ドバイワールドカップから帰国初戦の
帝王賞2着の後最初の屈腱炎を発症、
その後復帰戦を前に2度目の屈腱炎を
発症したにもかかわらず復帰2戦目で
ジャパンカップダート2勝目を挙げ、
そこからGⅠ(JpnⅠ)3連勝を飾ったように
『不死鳥』の如く復活を見せてくれた
名馬でした。
残念ながら種付け中の事故で
2014年5月に死亡してしまいましたが、
残された産駒から父のような産駒が
誕生するのを期待したいと思います。
2.イスラボニータ
母:イスラコジーン
母父:Cozzene
主なGⅠ・重賞勝ち鞍
- 皐月賞
- 阪神C
- マイラーズC
- セントライト記念
2歳から6歳まで常にトップクラスで
レベルの高い戦いを続け、
1400m~2400mの重賞連対実績からも
総合能力が非常に高い馬であったのは
誰が見ても明らかでしょう。
正攻法の王道競馬で完勝した皐月賞や
惜敗続きにピリオドを打ってゴール前の
叩き合いを制した17年のマイラーズC、
そして直線前が壁になりながらも
僅かに開いた隙間をこじ開けるように切り裂き
最後の最後で引退レースを制した阪神Cなど、
古馬になってからはGⅡ2勝のみでしたが、
そのインパクトが非常に強かったのも
事実だと思います。
引退レースでレコードタイムを叩き出した
その高い『スピード能力』と
長くトップレベルで活躍した『成長力』を
上手く産駒に伝えることができれば
自ら勝てなかった日本ダービー制覇を
果たしてくれる産駒の誕生が
期待できるかもしれませんね。
3.キンシャサノキセキ
母:ケルトシャーン
母父:Pleasant Colony
主なGⅠ・重賞勝ち鞍
- 高松宮記念(10、11年)
- 阪神C
- スワンS
- オーシャンS
- 函館スプリントS
南半球産で他馬と比べて半年ほど
成長が遅い面がありながら
その高いスピード能力と成長力を武器に、
心身ともに充実期を迎えた7~8歳時に
最も強いレースを見せてくれた
『遅咲きのスプリンター』
と言っていいでしょう。
特に6歳秋にスワンSを勝利して以降、
1400m以下では連対を外さなかったように
まさに盤石とも言える強さを見せ続け、
現役生活の中で最も強いレースを見せた
高松宮記念連覇を達成した翌日に
電撃引退を発表するなど、
去り際も含めて非常に大きな印象を残した
名馬だと思います。
種牡馬としても初年度産駒から3年連続で
重賞勝ち馬を輩出しているように
順調な滑り出しと言えそうで、
今後短距離路線において欠かせない種牡馬
となっていくのは間違いないでしょうね。
4.ストレイトガール
母:ネヴァーピリオド
母父:タイキシャトル
主なGⅠ・重賞勝ち鞍
- ヴィクトリアマイル(15、16年)
- スプリンターズS
- シルクロードS
牡馬の活躍馬が多いフジキセキ産駒において、
牝馬でありながら7歳まで現役で走り
複数のGⅠ勝利を達成したように、
父フジキセキの『成長力』を
これ以上ない形で証明したのが
このストレイトガールでした。
4歳夏までは普通の条件馬の1頭でしたが、
そこから4連勝で一気にオープン入りして以降、
牡馬相手に国内外含めて常にトップクラスで
レベルの高い戦いを続け、
特に引退レースの16年ヴィクトリアマイルで
見せた圧倒的スピードと驚異的な瞬発力は、
同馬の可能性を信じて成長を待った
2~3歳時があったからこそ花開いた能力
だと断言していいと思います。
引退後はイギリスで繁殖入りし
2018年に無事初年度産駒が誕生しており、
今後日本でストレイトガール産駒の走りが
見られるのを楽しみに待ちたいところですね。
5.ダノンシャンティ
母:シャンソネット
母父:Mark of Esteem
主なGⅠ・重賞勝ち鞍
- NHKマイルカップ
- 毎日杯
『近年屈指のハイレベル世代』と言われた
07年世代の中でも極上の切れ味を誇る
圧倒的末脚を武器にNHKマイルカップを制し、
短い競走生活ながらも強烈なインパクトを
残したのがダノンシャンティです。
後方で脚を溜めた時の末脚の爆発力は
半端ないものがあり、
3歳春の重賞3戦
(共同通信杯、毎日杯、NHKマイルカップ)
は全て33秒台の末脚を使っているのが
何よりの証明と言えそうで、
ほぼ直線だけで全ての馬を交わし切った
NHKマイルカップのレコードタイム1.31.4は
今の時代で考えても非常に価値が高いのは
間違いないでしょう。
初年度産駒から自らの末脚を彷彿とさせる
強烈な末脚で重賞3勝を上げている
スマートオーディンを輩出しており、
今後もGⅠ戦線を賑わせてくれるような
産駒の誕生に期待したいと思います。
フジキセキ種牡馬としての成績/戦績は?
出典:http://www.netkeiba.com/?rf=logo
最初に期待が高かっただけに
種牡馬生活前半はやや評価を
落としつつあったフジキセキでしたが、
晩年を迎えて次々とGⅠ馬を
送り出したところを見ると
同馬自身現役生活で2歳時から
圧倒的な強さを見せながらも
『晩成』的な面もあったのかもしれません。
ここからは種牡馬としての勝ちや、
現役生活を引退してからに注目して
見ていきたいと思います。
フジキセキの種付け料は?
種牡馬生活前半は早熟性や成長力を
疑問視された産駒が多かったことから、
一旦は200万円近くまで種付け料が
下がったフジキセキでしたが、
2002~2004年にカネヒキリや
キンシャサノキセキ、ファイングレインなど
国内外でGⅠ馬を次々に輩出したことが
高く評価されて、
2007年には同馬史上最高額の600万円まで
種付け料が高騰することになりました。
当時サンデーサイレンス1強だった
種牡馬ランキングの中で、
国内生産馬としてこれだけの評価を得た事実は
十二分に評価していいのではないでしょうか。
フジキセキの馬主は?
フジキセキの馬主は
『齊藤 四方司』さんという方で、
ジーク証券株式会社の代表取締役社長
を務めたことがある方となっています。
グリーンに縦三本の黄色線の勝負服
を基本としており、
重賞でこの勝負服を見たことがある方も
多いと思います。
フジキセキの他にも
ダービー馬ジャングルポケットや
芝重賞勝ち馬スマイルジャック、
さらにはアイルラヴァゲインに
交流重賞4勝を上げたボランタスなど、
所有馬の少なさを考えれば
非常に『引きの強い』馬主であったと
言っていいと思います。
現在は諸事情により馬主を引退していますが、
個人馬主でGⅠ馬を2頭も所有した実績から
運の強い馬主だったのは
間違いないでしょうね。
フジキセキの死因は?
2011年以降は元々腰を痛めていたことや
体調不良もあって種付けを行っておらず、
2013年に正式に種牡馬を引退してからは
社台スタリオンステーションの
功労馬専用馬房にて余生を過ごしましたが、
2015年12月28日に死亡が確認されました。
死因としては以前からの持病であった
頸椎を損傷したこととされており、
23歳で生涯を閉じることとなりました。
3歳という若い時期から種牡馬として活躍し、
ラストクロップでイスラボニータという
最高傑作を残したことからも、
フジキセキ自身にとっては
非常に充実した種牡馬生活が送れたのは
間違いなかったのではないでしょうか。
フジキセキの現役時代の成績/戦績は?
フジキセキの現役生活は
- 新馬戦
- もみじS
- 朝日杯3歳S
- 弥生賞
の4戦のみと非常に少ないものでしたが、
その4戦で見せたレースはどれも
非常にインパクトが強く、
競馬ファンに『強い!』といった印象を
強烈に残したものでした。
今回はその4戦の中でも特に映像で
見てもらいたい『弥生賞』を取り上げて、
その脚質と共に圧倒的強さを
振り返っていきたいと思います。
フジキセキの脚質は?
フジキセキの脚質はその有り余るスピードを
最大限活かしての
『先行抜け出し』
が基本となっており、
掛かり気味に先行しながら楽に先頭に立ち
ムチを1発も使わずに押し切った
朝日杯3歳Sの強さは同馬の非常に高い能力を
これ以上なく証明したものだと思います。
ただ、デビュー戦ではスタートで
大きく出遅れながらも直線ほとんど持ったまま
前を行く馬を差し切って楽勝したように、
溜めれば切れる脚を使えたのも事実で、
もし無事に現役生活を送っていれば
どんなレースでもできる
『自在脚質』
であった可能性も否定できません。
『本当に強い馬はどんな展開でも強い』
といったことを自らの脚質で証明したのが
フジキセキの走りと言えそうですね。
レース動画を紹介
フジキセキのラストランでありながら、
その強さの全てが凝縮されたレース
となったのが今回紹介する弥生賞です。
ラスト100mで見せたその強烈な『加速力』を
是非とも感じてほしいと思います。
弥生賞(1995年)
このレースの驚くべきポイントは、
直線で外からホッカイルソーに
並びかけられてからの
『2段階加速』
にあるのは間違いないでしょう。
前半の1000m通過が62.5という遅い流れを
2番手で追走したフジキセキは
直線に入って楽に先頭に立ちましたが、
坂の手前で外から一気に追い込んできた
ホッカイルソーに一旦は前に
出られそうになりました。
そこから鞍上の角田騎手が気合を付けると
そこから一気に加速して同馬を置き去りにし、
ゴールした時には2馬身半という
決定的な差が付いており、
他馬との絶対的な能力差を
まざまざと見せつける結果となりました。
このレースによって
『幻の三冠馬』
の称号を決定的なものにして、
この弥生賞が多くのファンに衝撃を与えた
フジキセキのベストレースであるのは
間違いないと思います。
まとめ
サンデーサイレンスの初年度産駒ながら
『最高傑作』とも言われたフジキセキですが、
同馬がその本当の強さを見せることなく
志半ばで引退したことで、
その後のサンデーサイレンスの大活躍の印象を
より強烈なものにしたのは覆しようのない事実
だと思います。
現役生活で様々な可能性を
我々競馬ファンに想像させ、
種牡馬としても最後に素晴らしい後継馬を
残したフジキセキは
間違いなく日本競馬の発展に大きく
貢献することになった1頭で、
この強さを語り継いでいくことが
競馬ファンに残された『義務』
ではないでしょうか。